477 :1/2 :2006/07/28(金) 18:54:28 ID:anwqWPFg
阪神大震災があった頃、ヨーロッパの田舎町にいた。
もう絵に書いたようなド田舎。観光客もほとんど来ないような。
ある日、地元の食堂で飯を食ってたら、
日本で大災害が起きているというニュースを聞かされた。
英語はほとんど通じない場所で、詳しいことはまったくわからない。
少ない情報をつなぎ合わせると、日本の半分が壊滅的被害を受けてるらしい。
詳細がわからないだけにものすごく不安になった。
すこし大きな街に行けば何かわかるかもしれないが、
その田舎町から街に行くには日に数本のバスしかない。
その日のバスにはもう間に合わなかった。
とりあえず翌日のバスで移動することにしたが、とにかく不安でしかたがない。
家に国際電話をかけたが、コール音は鳴るものの誰も出ない。
東京に住む親戚の家にもかけたが、そこも誰も出なかった。

20歳も過ぎて図体もでかい俺だが、あまりに不安で
食べかけの皿もそのままに、ついボロボロと泣いてしまった。
食堂にいたおっちゃんおばちゃんたちがえらく心配して慰めてくれる。
とにかく暖かいものを飲めと、砂糖たっぷりのコーヒーを奢ってくれたり。
親と同じ年頃のおっちゃんおばちゃんたちに囲まれていると、
親のありがたみというか、俺が親をどれだけ好きかが心の底から感じられた。
万が一だとしても、こんな別れ方は絶対イヤだと思った。
俺は期間1年の予定で一人旅中だった。
大学を休学しての旅で、出発前は親も色々心配してくれた。
旅の途中には局留めの手紙が届いたりして、
頼んでないのに資金の振り込みがあったりした。
大丈夫だとは思うが、旅先では何が起こるかわからない、
万が一の時に使え、との但し書き付き。
478 :2/2 :2006/07/28(金) 18:58:05 ID:anwqWPFg
結果的に、親は無事だった。
電話が通じなかったのもたまたまらしい。
田舎町では過大報道を聞いてたわけだが、肩透かしの気分は全然なかった。
実際に被害を受けた人も大勢いるし、俺の親はたまたま無事だっただけだ。

あの時の田舎町のおっちゃんおばちゃんたちに
親は無事だったよと伝えなければと思った。
一応宿の人には電話をしたが、みんなに伝わっているかな。
「大丈夫、お前の両親はきっと無事だよ」と言われて、
どれだけ救われたかわからない。
ものすごく不安だったけど、嬉しかった。
あなたがたのお陰で、俺は自分がいかに子供だったかがわかった。
親がいるからこそ、自分がここにいられるんだと思いました。
本当にありがとうございました。どうかみなさんもお元気で。
夕陽がものすごくきれいなあの町、一生忘れません。