940 名前:Mr.名無しさん[] 投稿日:2008/05/17(土) 08:55:50

ケータイとは便利なものである。本来の電話の機能だけでなく、
メールや電卓の機能までついている。また最近では、バックライトを手元を照らすのに
使う向きも少なくないようだ。
かくいう私も、夜帰宅した際に鍵穴を照らすのに使っている。
しかし先日、一杯飲んでから帰宅した際には、ちょうどケータイの電池が切れていて
困ってしまった。
しらふであれば手探りでなんとかなるのだが、この時はかなり酔っていた。
2,3分がんばってみたのだが、ふらついてうまくいかない。
さてどうしたものかと思案しているうちに、昔物理の授業で習ったチェレンコフ光を
思い出した。
これは、荷電粒子が媒体中の光速よりも速く動いたときに放出される光のことで、
青白い色をしているそうだ。
酔っていた私はなんとかこの光を出せないものかと無謀なことを考えた。
そうだ、手を思いっきり速くうごかすのはどうだろう?
さすがに光速よりも速く動かすことはできないががんばれば何かの間違いでちょっと
くらい出てくれるやもしれぬ。
しらふであればこんな考えは一蹴しているところだが、血液に溶け込んだアルコールは
私の脳細胞の働きを鈍らしていた。私は手を力の限り振り回してみた。
2,3分がんばってみたが、汗は出れど光が出る気配はない。
手が帯電していないのが悪いのかと思い、手を脇や又に挟んで激しく動かして
静電気で手を帯電させた後、また力の限り手を振り回した。5分ほどたったころだろうか。
もう諦めようとしていたとき、あたりが赤い光で包まれた。
はて、チェレンコフ光は青色ではなくて赤色だったろうか?と思ったが、すぐにそれが
パトカーの光だと分かった。
なるほど。夜中に手を又にはさんで激しく動かしたりしていれば、不審者と思われて
通報されてもいたしかたあるまい。まあ、正直に話せば分かってもらえるだろう。
警官が私に近づいてきて言った。
「ここでなにをしているんですか?」
私は正直に答えた。
「ええ、ちょっと。あれを出そうと思いましてね」
私は一晩、留置所で過ごすことになった。