796 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 20:21:16 ID:+xI16PLc
大河ドラマ開始記念・上杉景勝と結城秀康のお話

関が原後、徳川の覇権が確立した頃の事
江戸城に出仕した上杉景勝。広間に座っていると、そこに結城秀康がやってきた。

関が原の折直接対峙した二人ではあるが、互いに尊敬しあっている
間柄である。
そうはいっても、秀康はいまや天下人の息子であり、景勝は敗軍の将である。
景勝は座を立って秀康に

景勝「…」
秀康「?」

兼続「秀康様、殿は『秀康殿、どうぞ上座にお座りください』と申しております。」
秀康「いやいや、景勝殿の方が先に着座なされていたのだ。どうぞそのまま。」

景勝「…」
兼続「『ここは江戸城でござる。身分も同じ中納言であれば、家康公のご子息である
   秀康殿が上座にあられるのが当然』と、申しております。」

秀康「何を言われるか。同じ中納言とは言っても任官されたのは景勝殿の方が先でござる。
   後輩は先輩を立てねばなりませぬ。それに私は今は結城家の者。結城家と言えば、
   世が世なら関東管領たる上杉家に従わねばならぬ家。ささ、お気になさらずどうぞご着座を。」

景勝「…」
兼続「『かたじけない思いやり、痛み入る』と申しております」

このようにして景勝は江戸城内において恥をかくことなく、徳川の世になっても、上杉家の
体面を保った。景勝のことを尊敬している秀康も、その事がとても嬉しかった。
そして秀康はいつも思うのだ。直江兼続の翻訳は、本当に正しいのか?と。