614 名前:名無しのオプ[sage] 投稿日:2009/12/14(月) 16:14:00 ID:NMM8OqT2
女房からの突然の電話に俺は焦った。
「ん、何だよ急に…えっ、今何してるかって?だからぁ今日出掛ける前に言っただろ。時代劇の撮影だよ」
最近、女房は不意に俺に電話を入れてくる。俺は手に持ったブランデーグラスをテーブルへと戻した。
「今スタジオで相手役のエリカとリハーサルの真っ最中だよ。現代劇と違って、時代劇は所作とか
小道具の使い方とか難しいからリハも念入りなんだよね。俺、時代劇初めてだしさ」
ベッドの上では、艶かしいネグリジェを着たエリカが起き上がって気だるそうに髪をかきあげている。
「何、浮気が心配?もう、何言ってんだよ。新婚三ヶ月で浮気する男なんかいないよ。
えっ、じゃあ一年経ったら浮気するのかって?揚げ足取るなよ。そういうことじゃないから」
エリカは意地悪そうな笑みを浮かべると、何を思ったのかネグリジェのボタンを外し、白磁の様に
まっ白い豊かな胸をはだけて俺に見せつけた。俺は慌てて目を逸らした。
「と、とにかく、俺はお前一筋なんだから。安心してくれよ。なっ、もういいだろ、リハ再開するから。
うんうん、また連絡するよ。じゃあな」
俺は、深く息を吐いた。まったく女房の心配性には呆れるよ。俺くらい女房のことを愛している奴はいないのに…。
俺はエリカに向き直った。
「お前なぁ、俺が女房と話している時に胸とか見せるなよ!」


俺は指先大の耳はめ込み型の電話を外しながらエリカに文句を言った。
「ちょっとしたジョークよ。大体リハ中に耳フォン付けたままのあなたが悪いわ。女優はね、役に入ると相手役に
本気で感情移入するんだから、奥さんとの痴話喧嘩なんか目の前で見せられたら白けるわ」
エリカの言うことは全くの正論だ。俺に反論の余地は無かった。

「悪かったよ。もう電源切ったから…監督、スタッフのみんなもすいませんでした。気を取り直してリハお願いします」
俺はセリフの確認のために台本に目を通した。台本の表紙には「時代劇『平成太平記』2209年12月公開」と書かれている。