268 名前:灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM [] 投稿日:2010/02/24(水) 19:12:22 ID:V+zHaXyh
『魔法のような壺』

デザイン性がすばらしいわけではなく、価値のある金属でできているわけでもないその壷に王様は見惚れていた。
壷は赤銅色をしており、脚から注ぎ口まででこぼこしている代わりに取っ手は付いていない。
壷から王様は目を離し前に控える家臣から片手で覆えるぐらいの黄金を受け取った。
受け取った黄金を壷の中に落とす。
黄金は底にぶつかる音をたてずにどこかへ消えた。
続けて丸めて縛った手紙を滑り込ませる。
そして壷の底に何も残らず消えているのを確認し、後は報告を待つ。
この壷は中にあるものをどこかへと消してしまう、そんな性質があるのだ。
壷に入ったものはひっくり返しても二度と出てこない。どこかへ送られるようだ。
これは壷の中に消えた物がどこへ行くのか確かめるために王様が考えた計画だった。
その結果民からの報告により、山岳近くの民家の杯から黄金と手紙が飛び出したことがわかった。
早速王様はその杯を持ってこさせ、褒美を手渡し代わりに杯を手に入れた。
「この杯から壷の中のものが出るのだな」
「そのようです。まさか杯から出てくるとは以外でした」
王様は家来と会話をした後、あることを思いついた。
「この壷に水を注いで杯から出た水を再び壷に注いでみよう。
 それが出来るなら注いだ水は終わりなく壷と杯の間をいったり来たりすることになる」
それを試みようと王様は杯を壷の上で逆さまにする。そして壷の方に水を注いだ。
その時だった。壷の注ぎ口がばっと広がり王様の手から杯が一瞬で吸い込まれた。
一度壷に入ったものは杯から出るはずだ。しかし壷の中に入ったものを出す杯自身が壷の中に入ってしまった。
それを見ていた王様とその家臣たちは、あらゆる方法で壷から杯を取り出そうとしたが結局、取り出すことは出来なかった。
そのことがあってからも王様は時々暇になると壷に適当なものを落としてみては退屈そうな顔をする。