590 名前:仕様書無しさん[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 15:58:51
私は初の決勝の舞台で緊張していた。今、後半のロスタイムに
入ったところだ。3-1でブラジルが日本に対して、リードを奪っている。

そこでミスターオカダが動いた。3番に代わり10番。
日本代表は諦めたのか、皆が目に涙を浮かべているようだ。

すると突然、日本代表たちがバイタルエリアで狂ったようにドリブルを始め、
ブラジルの選手と接触すると明らかなシミュレーションをして私にファールを取れと目で訴えかけてくるのだ。

とはいえ、私だってこの最高の舞台でジャッジをする審判だ。
同情でファールをとることなどできない。時計を見た。残り20秒。

驚いた。審判を始めて20年近くになるが、こんなことは初めてだ。
突如、カカがボールを両手でキャッチしたのだ。

カカが私に近づいてきて言った。
「僕たちの優勝祝いのおすそわけだ、あの10番に蹴らしてやってくれ」
カカの目にもうっすらと涙が浮かんでいた。

その10番に何があったのか、私は知らない。しかし、恐らく最後のワールドカップなのだろう、
彼は静かにボールをセットし、腰に手を当て、ゴールを見、そして視線をボールに移した。

その刹那、突如現れた18番がそのボールを蹴ってしまったのだ。
そのボールは無回転でユラユラと揺れながらゴールに吸い込まれた。

今大会得点王の誕生した瞬間だった。