185 名前:創る名無しに見る名無し[] 投稿日:2010/01/27(水) 09:10:37 ID:vLKUtmqQ

「免罪列車」

駅員の声で起こされたのは深夜0時過ぎの事だった。
どうやら最寄駅を大分通り過ぎてたみたいだ。55歳にもなって、酔っ払って寝過ごすなんて恥ずかしい事である。
「もう終点ですよ。折り返し電車が間もなく出発しますがいかがされますか?」
「あっ、乗ります」
すると駅員は向かいのホームに停車中の電車指差した。
「階段を上って、3番ホームですので」
私は急いでその電車に飛び乗った。どうやら乗客は私一人のようだ。余計なタクシー代がかからずに済んだと、胸を撫で下ろしていた所いた。その後電車は発車したが、数分後になぜか回りの雰囲気が違う事に気がついた。
いつもと風景が違う。ここはどこだ?
車掌からアナウンスが聞こえてきた。
「毎度ご乗車ありがとうございます。この列車は免罪駅までノンストップで運行して参ります」
免罪駅……そんな駅名聞いた事ないぞ。
私はパニックになり、少しの恐怖感も沸いて来た。
一体何が起こっているんだ?窓の外を眺めていると、深夜にもかかわらず急に明るくなり、映画のスクリーンのような物が目に飛びこんできた。

『1965年5月8日』と字幕が現れると、そのスクリーンの中に、子供の頃の私が映し出された。

「おい!明日だぞ!必ず1万円持ってこいよ!」
「そんなの無理だよ…」
「お前の家は金持ちなんだろ?母ちゃんの財布から抜いてこい。明日持って来なかったらタダじゃおかないからな!」

間違いなく私本人だった。しかも、この情景は覚えている。
その後も次々に、日付の字幕と共に私がスクリーンに現れた。

『1974年5月9日』
就職した会社にて、ライバルだった同期社員が所持していた重要な顧客資料をシュレッダにかける私がいた。
それにより、この同期社員は翌日上司よりクビを言い渡される。

そういや昔は酷い事したもんだなあ、と思っていたところまたしても画面は切り替わった。

『1996年2月14日』

「奥さんと別れて私と一緒になるって言ったじゃない」
「すまんが、今は動けないんだよ」
「嘘泣き!もういいわ。死んでやる!」
「勝手にしろ!元々、私が結婚してるのを知ってて付き合い出したんだろ?死ぬ勇気なんてないくせに!」
翌日の新聞で私は彼女が特急電車に投身自殺をした事実を私は知る。

私の悪事が時系列でスクリーンに映し出されている。その後も私が横領したのを部下におしつけたり……。

かれこれ30分は経っただろうか。車内アナウンス
が流れる。
「列車は間もなく終点の免罪駅に到着いたします」
列車のブレーキ音が聞こえると数十秒後に停車した。
ほんとに奇妙な列車だな。しかしこんな駅知らないぞ、と呟きながら列車を降りた。すると死神の格好をした車掌が立っている。

「いかがでしたか?」
「奇妙な列車だよ!一体ここは何処なんだ?」
「あなたは今まで犯してきた罪を償った事がありません。最近自ら罪を償おうとする人間が減りましてね。私がお手伝いしてるんですよ。ヒッヒッヒ」
「よくわからんが出してくれ、タクシー乗り場はどこだ?」
「その前に乗り越し代金を清算して頂きますよ。えーとあなたがこれまで犯した罪は合計で1500万円支払えば償えるでしょう。現在は便利になりましたよ。罪は金で消せるのですからね」
「馬鹿馬鹿しい!そんな大金有る訳ないだろ!」
「なるほど。今は不況ですからね。そういった方に便利な支払方法があるんです。」
「なんだそれ!どうすりゃいいんだよ!」
「簡単ですよ。ちょいと、腎臓と角膜を頂くだけなんです」