449 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2011/02/15(火) 00:34:02
新しい職場に通い始めた初日。手早く昼飯を食うために讃岐うどんの店に駆け込んだ。

土曜日の昼間。席は家族連れなどで6割方埋まっており、店内にはゆったりとした空気が流れていた。
休日でない俺が注文したのは日替わりサービスメニューの天肉うどん。
エビ天2本とかき揚げ、牛肉が乗って500円。手頃な価格でボリュームもバッチリだ。

実は300円程度のシンプルな肉うどんで済まそうと思っていたのだが、メニューの写真の迫力に負けた。
財布にもちょうど500円玉があったし、何かの縁だろう。

注文して5分足らず、すぐにうどんが運ばれてきた。
具が山盛り。実に美味そうだ。
ここで目に入ったのはテーブルの上のゴマ。容器が我が家のとそっくりだったのだ。
慣れた手つきでゴマを振りかけようとした時、事件が起こった。

カパッ!  ドバー・・・


450 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2011/02/15(火) 00:35:29
よく漫画である、ラーメンにコショウをドバーッ!ってやつ。
アレのうどんとゴマ版。

エビ天とかき揚げの上に盛られたゴマの山。壮観である。
やってしまった。もったいない。ゴマを無駄にしてしまった。何よりお店に申し訳ない。
少し声が出てしまったと思う。
すると、横のオッサンが「ゴマ、もらおうか?」とレンゲを持ち言ってきた。
俺は「すいません、どうぞ。」とドンブリを差し出した。オッサンはスっとゴマを掬い出し、自らのドンブリに入れた。
すると、他の客、家族連れ、老夫婦もレンゲやドンブリを持ち寄り、俺のゴマを掬っていったのだ。
見知らぬ人の善意でどんどん減ってゆくゴマの山。

人助け。なんと素晴らしいことだろう。ここの土地の人々の優しさは空腹さえも満たしてくれそうだ。
俺は涙が落ちそうになるのをこらえながら、ゴマの無くなった素うどんをかき込むと足早に店を後にした。